Translate

2009年5月28日

原点回帰

村上春樹氏の新作長編小説『1Q84』(全2巻)のamazonでの予約が合計で1万冊を超えたというニュースが、先日ありました。私もその中のひとりです。発売前にも関わらずamazonランキングは、1Q84(1)が、本で1位、1Q84(2)が2位と上位を独占しています。
1Q84(1)1Q84(2)
著者: 村上 春樹(むらかみ はるき)
出版社: 新潮社
価格: 1,890円

またTVニュースでは、発売前に5万冊が増刷になり、先行販売をする都内の書店の様子が流れていました。

もともと人気作家ですが、話題性づくりにも成功しています。今回の作品は、事前に作品のテーマや内容を一切明らかにしていません。新潮社の「1Q84」の告知ページを見てもタイトルと発売日だけです(でも、flash)。amazonの「商品の説明」にも内容の記載はありません。

壁と卵とシステム
村上春樹氏は、今年2月にイスラエルの文学賞「エルサレム賞(Jerusalem Prize)」の授賞式でのスピーチが話題となりました。
If there is a hard, high wall and an egg that breaks against it, no matter how right the wall or how wrong the egg, I will stand on the side of the egg.

※ エルサレム・ポスト(Jerusalem Post) Israel is not the egg. から引用
「壁と卵」だけが大きくとりあげられましたが、本質は誰が構築したシステムなのかにあると思います。

閑話休題

1Q84』の人気は、数ヶ月前の「壁と卵」での著者の認知度と作品の内容が謎であるという話題性が相成って村上春樹ワールドのファン以外にも興味を持たれた結果ではないかと思います。

しかし、考えてみると、少し前までは書籍の内容を購入前に知るということは、あまりありませんでした。新聞や雑誌での書評、新聞広告、交通広告、ポスターなど、受動的に目にすることはあっても、能動的に探すことはできませんでした。能動的な探索は、実際に書店で手にとることでけです。マイナーな作品であれば内容不明は宿命だったのです。

ネット販売モデルでは、実際の商品を見せることができないため、より多くの情報を提供することによって商品を説明しなければなりません。更に集合知という名の主語が曖昧なレビューや☆の数によって商品の選択を促します。そこには個人の価値観はありません。

1Q84』は、郵便受けに投函されたamazonの包みを開けるときに、書店で見つけた本を手にするときの「ワクワク感」を想い出せてくれるかもしれません。

0 件のコメント:

コメントを投稿

アクセス上位(過去7日間)