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2013年1月14日

それでも Kindle Paperwhiteを買ってしまった理由

Kindle Paperwhiteを買ったよ!」子供の頃ならそう素直に喜んで言えたはずです。「好きだから」という理由だけで十分でした。もう少し知恵が付いてくると「ミーハーだから」と言って笑って誤魔化していたかもしれません。しかし、大人になると自分がベストな選択をしたことを納得するためにその理由が必要となります。

黒船に乗って電子書籍リーダーがやってきた

2012年はkobo、Kindleという二隻の黒船来襲により日本の電子書籍元年となりました。特にkoboが、コンテンツビジネスとしての方向性の意思表示として、低価格なデバイスを提供してきたことによって、Kindleも急遽価格を同価に下げ、SonyやBookLive!の電子書籍リーダーなども軒並み1万円を切った価格で提供されるようになりました。

もちろん電子書籍リーダーを購入しなくても、スマートフォンなどでも電子書籍を読むことはできます。自分もiPhoneのi文庫Sに「ドグラ・マグラ」「少女地獄」「悪魔祈祷書」などかつて好きだった夢野久作の小説を青空文庫でダウンロードして読んでもみました。しかし、スマホで本格的な読書をしようとすると、光源であるディスプレイを長時間見続けることになり、目をかなり消耗します。また4インチ程度のディスプレイでは、書籍で慣れ親しんでいた文章の世界を金型で切り取っては、頭の中でまた繋ぎ合わせるといった作業を繰り返しているような感覚に陥り、読書を楽しむまでに至りません。

かといって、iPadをランドスケープにした見開きでの読書スタイルは、画面サイズ的には問題がありませんが、手に持つにはデバイスが重すぎです。そういった意味では、最近の7インチタブレットが、画面サイズとデバイスの重量の観点からすれば最適なのかもしれません。

何れにせよ、目を酷使するという事さえ許容できればの話ですが。

目に優しい電子ペーパ、でも万能ではない

やはり、読書には、目に優しい電子ペーパーの電子書籍リーダーが必要なのです。

しかし、電子ペーパーを採用した電子書籍リーダも完璧ではありません。「残像現象」「ページリフレッシュ」といった電子ペーパーならではの大きな弱点もあります。「残像現象」とは、ページ送りの際に前ページの表示内容が薄く残ってしまうことです。その残像を一定度の割合で消去する為に表示を白黒反転させる「ページリフレッシュ」が必要となるのです。技術の進歩により、「残像現象」もかなり改善されているようで、「ページリフレッシュ」の回数も少なくなっています。

電子書籍リーダーの比較

下記に個人的な観点で電子ペーパーを採用している電子書籍リーダーの諸元を比較してみました。比較した電子書籍リーダーは、Kindle Paperwhite, kobo glo, Sony PRS-T2, Liedo の4機種です。

Lideo以外は、ユーザーガイド(マニュアル)がネットで閲覧できるようになっていますので電子書籍リーダーを機能比較をする上での参考にしてください。



解像度の比較

電子書籍リーダーを解像度で比較すると、1024×758 と kindle, kobo glo に軍配が上がります。但し、6インチでの有効解像度は 958×658 ですし、モノクロ16階調での電子ペーパーでの文字表示を考えると 800×600 との差は気になるものではないと思います。

サイズと重量の比較

横幅は、PRS-T2、Lideoの110mmが最小となります。片手で持つとKindle PWとの7mmの差は以外に大きいことがわかります。重量でも両者は50g違います。koboの横幅と重量はその中間になります。横幅と重量は電子書籍リーダーを快適に使用できるかの大きな要素です。また外観の大きな違いではSony PRS-T2にはページ送りの物理的なボタンが配置されています。他の機種は、画面タッチ若しくはスワイプでのページ送りだけです。世代的な好みもあるのかもしれませんが、シンプルなデバイスという意味では操作ボタンがない方がスッキリとしています。Lideoにも物理ボタンが設置されていますが、ページ送りのボタンはなくその必要性が理解できません。

ページリフレッシュ

最大はSony PRS-T2の15ページに1回です。kobo gloも1 - 6ページに1回で設定できます。Kindle Paperwhiteは、ページ毎にリフレッシュとしなければ5ページに1回となります。Lideoについては調べることができませんした。「残像現象」と「ページリフレッシュ」は電子書籍リーダーのマイナス面です。Sonyは競合製品と比べて優れている面として商品説明に記載していますが、各社とも製品仕様に明記するべきです。

拡張メモリ

デバイスに紐づく書店で購入した電子書籍に関しては、各社とも自社で購入した書籍はクラウド上で管理できるようになっています。なのでデバイスのデータ保存領域としては1Gもあれば十分です。自炊本が多い場合でもPCで管理し、必要な書籍をデバイスに移動させるのであれば、メモリ拡張に固執する必要はないと思います。

バックライト機能

幼い頃に懐中電灯を持って布団の中で本を読んだ記憶はあります。大人になってからは暗闇で読書をしなければならない状況は今のところありません。オプショナル的な要素のバックライトですが、Kindle Paperwhiteはバックライトの輝度を0にしても完全にオフにはなりません。

またバックライトの明かりによって画面下部にムラができます。『明るさごとのディスプレイ比較』というAmazonが提供している説明ページで、暗い部屋でのおすすめ設定として『明るさを低く設定した場合』の写真が掲載されていますが、それでも画面下部にムラがでているのがわかると思います。


辞書機能

電子書籍の利点として辞書と連動できるところにあります。語彙を選択することによって簡単にその意味を調べられることができます。国語辞書、英和辞書、英英辞書が揃っているのが、Kindle PWとPRS-T2です。Kindleは購入した辞書も利用でき、The New Oxford American Dictionaryの代わりにCollins English Dictionaryも使うことができます。残念ながらkoboには英和辞書がありません。

ハイライト・メモ機能

本を読むときに線を引きたい、書き込みをしたいというのは万民の欲求なのでしょうか。各デバイスともにこれらの機能を備えてくれています。更にSNSと連携し、気になった部分をシェアすることもできます。読書自体を誰かと共有したいとは思いませんが、読書をしたときに気になった箇所やそのとき思ったことのメモは自分自身の記録となり、記録した内容から新しいアウトプットを産み出すことができます。この機能で長けているのはSonyのPRS-T2でしょうか。付属のペンを使って手書きで線がひけ、書き込むことができます。ここまでのこだわりを持つのはやはり日本人ならではの発想です。


コンテンツ

電子書籍元年と初めに記載しましたが、電子書籍の普及にはデバイスだけではなく、コンテンツの充実が欠かせません。しかし、日本では電子書籍コンテンツの整備が遅れたためにマニアによる自炊本が先行し、いつしか電子書籍=PDFというような悪しき意識が蔓延してしまいました。自炊本に拘るのであれば、電子書籍リーダーは購入するべきではありません。電子書籍リーダーは画像タイプのPDFを読むようには設計されていません。PDFはオプショナル機能にすぎないのです。サヨナラ自炊本。

しかし、電子書籍化はまだ発展途上段階なので、現時点でも書店で平積みされている書籍の大半は電子書籍として購入することができません。それでも今後も間違いなく書籍の電子化は進んでいくことでしょう。電子書籍リーダーから購入する電子書籍は、リーダーを提供する電子書籍書店からというのが原則です。つまり、kobo gloを購入すれば、koboイーブックストアから、Kindle Paperwhiteを購入すれば、Kindleストアからの書籍購入となります。電子書籍リーダーの選択は即ち電子書籍書店の選択なのです。リーダー選択時には、電子書籍の取扱量が少ないといっても各書店でどのような書籍が購入できるかの確認は必要です。

また電子書籍書店の選択の重要な要素として今後の成長もあります。その判断としては会社規模や現在の書籍取り扱い数よりも、万民が選択する書店を選択しておけば間違いないのではないかと思います。

下記は、1月に発表されたインプレスで発表された「OnDeck電子書籍ストア利用率調査」の結果です。サンプルの母体、サンプル数などに疑問はあるものの、ひとつの目安としては捉えることができます。

これまでトップを守っていた「紀伊國屋書店BookWebPlus」の13.4%を大きく上回る40.0%で「Kindleストア」が首位になりました。2012年10月25日に日本でサービスを開始したばかりのKindleストアですが、短期間で多くのユーザーを獲得したことが明らかになりました。

興味深いのは、2位以下の電子書籍ストアの利用率に大きな変動がなかった点です。紀伊國屋書店BookWebPlus、Reader Store、BookLive!はそれぞれ利用率があがっています。Kindleストアの日本参入は、既存ストアのシェアを浸食せずに、新たな市場を作り上げたことになります。
という調査結果が将来をも示唆しているように思えます。まだまだ限られたコンテンツですが、新しい読書スタイルを確立して大人の読書機会を増加させるために、既存書籍の電子書籍化、電子書籍ならではのコンテンツの充実を各出版社ともに努めてもらいたいところです。
ちなみにオリコンが発表した2012年の「年間“本”ランキング」BOOK総合の上位は、
と、なっています。この中で電子書籍化されているのは、だけです。一方、電子書籍を販売するKindleストアのBest of 2012では様相が異なり、
です。オリコンで2位となった「聞く力 心をひらく35のヒント (文春新書)」は、Kindleストアでも発売されていますが、書籍版と同価格で電子書籍のメリットである割安感がないのが残念です。
下記は、最近購入した電子書籍を書店ごとに調べた結果です。

  書籍版 Kindle
ストア  
kobo
eBooks
Reader
Store  
BookLive
20歳のときに
知っておきたかったこと
¥1,470 ¥950 ¥950 ¥1,000 ¥1,000
英語多読法 ¥756 ¥525 ¥525 ¥525 ¥525
もういちど生まれる ¥1,470 ¥1,120 ¥1,120 ¥1,176 ¥1,176
日常(一) ¥567 ¥539 ¥540 ¥567 ¥284

電子書籍書店によって価格に多少のバラつきがあるようですが、コストメリットは電子書籍としての魅力です。また書籍の値段が書店によって異なるというのも、紙の書籍時代にはなかった現象です。Sony PRS-T2では、紀伊國屋BookWebからも書籍が購入できますが、「20歳のときに知っておきたかったこと」は、紀伊國屋BookWebではReaderStoreよりも1円安く購入できます。

「日常(一)」はコミックです。このシリーズではKindleストアだけが最新刊の「日常(八)」を扱っていませんでした。コミックを電子書籍リーダーで読んでみると書籍版より小さい6インチの画面はギリギリのサイズです。1ページを表示する大きさが小さくなるということは絵も文字も縮小されます。また絵が中心となるのでページ送り毎にページリフレッシュが発生します。自炊本と同じく、コミックが中心となるのであれば、電子書籍リーダーよりも7インチタブレットをお勧めします。

青空文庫と洋書

青空文庫については各ストアとも直接ダウンロードができるようになっています。これは大変ありがたいことです。没後50年を過ぎている作家の作品を無料で読むことができます。
洋書については、黒船組のKindleストアとkoboイーブックストアでは、当然、扱っていますが、日本組のReaderStoreとBookLive!では洋書は購入できません。洋書を読むのであれば、電子書籍リーダーの選択は、必然的にKindle Paperwhiteかkobo gloとなります。

で、結局どの電子書籍リーダーを選ぶのか?

ハードウェア的には、SonyのPRS-T2が最も優れていると思います。しかし、洋書を読みたいと思った時点で対象外となります。通信環境がないのであれば、選択肢にLideoがあがるかもしれませんが、それ以外での理由はなさそうです。

ということで、Kindle Paperwhiteかkono gloの選択となります。もういちどKindle Paperwhiteとkobo gloを比較してみます。

  Kindle PW kobo glo
 
解像度
サイズと重量
ページリフレッシュ
拡張メモリ ×
バックライト
辞書機能
ハイライト・メモ
ストア

ハードではkobo、ソフト面ではKindle Paperwhiteといった感じでしょうか。結局、自分にとっての重要度が高い、辞書機能とストアの利点があると判断し、Kindle Paperwhiteを購入しました。

大人になると、いちいち理由を考えなければならないので面倒です。

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